社長歳時記 2024年1月

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「おふくろの味」

 夕食時、出されたもずく酢を口に入れると異様な味がしたので、思わず 「これ腐ってる」と私が言うと「じいじ、腐った物を食べた事あるん?腐った味 が分かるん?」と孫に聞かれました。  

 子供時代は腐りかけでもチャレンジしていましたから、何度もあると孫に 答えながら、なぜか、お袋が作った料理が思い出されました。  

 ある日、母親が夕食に作っておいてくれた味噌汁を食べていると、何かが 口の中でガシッと音がし、歯ごたえから固い物だと推測できました。  

 いつもの出汁を取ったいりこの残りだろうと、口から取り出し、箸の先を眺 めると、そこには黒々としたゴキブリが…。  

 あまりの衝撃に悲鳴を上げ噛んだ感触を思い出し「おえ~っ」と嘔吐しな がら、あまりに不衛生過ぎるとゴキブリ混入事件を母親に伝えました。  

すると「いけんやった、よく教えてくれたね」と感謝の言葉を期待していた のですが、少し浮かない顔で「あんた、父ちゃんが、ご飯まだやから黙っちょ きよ」と母親からの思いもよらない口止め発言にびっくり。  

 知らぬが仏、味噌汁がもったいないという、母親の説得に負けそうになっ たものの、ゴキブリ汁をすする親父が不憫で言い付けてやりました。  

 親父に作り直すよう言われた母親は、渋々、ゴ キブリ出汁の味噌汁を流し台に流しながら「ま あ、なして言うかいね~」と呟いていました。  

もしかしたら私が好きだった「お袋の味」はゴ キブリが隠し味だったかもしれない…。  

それなら、知りたくなかった。