社長歳時記 2023年6月

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「下津君の恩返し」

 「20 年前バイクがガス欠で困っていた時、社長に助けていただいた者で す。明日、そちらにお礼に伺いたい」と電話がありました。
 
 彼の話によると当時 20 歳で職を失い意気消沈し 12 月の寒空の中、バ イクで鹿児島から鳥取砂丘を目指していたそうです。  

 ところが道中の油谷でガス欠。スタンドは営業時間外で閉店。野宿を考 えていた彼に声を掛けたのが私なんですって。うっすら記憶あり。  
 夜中でしたがスタンドに頼み給油、 旅館にも宿泊のお願いをして、 五千 円を餞別だと渡したそうです。こんなにいい話なのに記憶なし。  

 翌朝、 元気になりそのまま帰郷。するとすぐに就職が決まりお礼をした かったけれど連絡先のメモが火事で焼失、今回、共に旅する友達に相談し たところ会社名を頼りにネットで探してくれたそうです。  

 今日ようやくお金が返せると封筒を出す彼に、 餞別だったからと一度は 拒みましたが、ケジメだからというので受け取ることにしました。  

 別れ際に改めて今から鳥取砂丘へ向かうというので、 近況を尋ねると 彼の口から苦笑いで「実は今、また無職で…」と衝撃の言葉が。  

 驚いた私は 20 年前にタイムスリップしたかのように「餞別だから」と貰っ たばかりの封筒を、彼の上着ポケットに押し込んでいました。  

 「それではお礼にならない」「なら社長歳時記に書かせて」と話している と友達の「好感度アップで恩返しになる」の声に下津君も納得の笑顔に。  

 でも、まさか現在、無職とは。好感度、上がり損ねた…。