社長歳時記 2023年5月

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「平和の象徴」

 夕方、国道を車で走っていると、橋の手前で数台が渋滞しています。  

 一台ずつ対向車線にはみ出しながら進むので道路工事かと思ったので すが、前の車に付いて行くと渋滞の原因は一羽の白い鳩でした。  

 沢山の車が通るのに、車道上から逃げようとしない光景に違和感を覚え 窓越しに鳩の様子を観察すると、足を引きずっている様です。  

 一旦は通り過ぎたのですが、あのままではいずれ車に轢かれてしまい そうで放置できず脇道に停車し、歩いて橋に戻る事にしました。  

 鳩のいる場所に近付くと、渋滞している車からの視線が気になりました が車道に出て、鳩の背後から気付かれぬ様に手を伸ばしました。  

 慎重に両手でそっと羽を掴んだと思った瞬間、突然、凄い勢いでバタバ タ羽ばたき始め、そのまま一気に飛び去ってしまいました。  

 私としては、まずは安全な場所に移動し、鳩の命の恩人となり、併せて交 通渋滞も解消するというヒーロー的な計画だったのです。  

 ところが鳩は自力で避難、同時に渋滞も解消、ヒーローからピエロ役へ 転じた私には鳩並みのスピードで立ち去るしかありませんでした。  

 そして数日後、知人の女性が私の顔を見るなり「言わないでおこうと 思ったけど、あ~喋りたい」と意味深な発言に嫌な予感がしました。  

 彼女の「鳩を助けようとしてたよね?」で居合わせた人からは「優しい」 の賛辞でしたが「でも逃げられたね」の一言で、結局は笑いの渦に…。  

 あの時、感じた車からの視線は勘違いじゃなかったのね。