社長歳時記 2026年3月

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「おかえり、ゆきこ」

 みなさん、覚えていらっしゃるでしょうか。

 以前、友人からもらった、頭部だけのマネキン「ゆきこ」のことを。

 元々は髪のカット練習用のマネキンですが、我が家ではなぜか、玄関に逆さに吊るされたり、私の車のボンネットに乗せられたりとドッキリに使われ、疲れ切った私は、とうとう倉庫に隠しました。

 ところが数か月後、社員に倉庫の整理を頼んだところ、「ゆきこ」まで処分予定の仮置き場に運ばれていたと聞きました。

 人形とはいえ少し心が痛みましたが、いつかは捨てるものだと自分に言い聞かせ、そのままにしました。

 それから一週間後、夕方、帰宅すると車庫の棚に「ゆきこ」がちょこんと置かれていました。

 普段なら悲鳴を上げる場面ですが、その日は懐かしさのあまり、思わず「おかえり」と声をかけていました。

 どうやら社員が気を利かせて、持ち帰ってきたようです。 しばらく屋外に放置されていたせいで、ゆきこの髪はボサボサ。

 その姿に孫娘が「かわいそうだから切ってあげよう」と言い出し、私もブラシとはさみを貸して、きれいになっていく様子を見ていました。

 その翌日、「またあのブラシ貸して」と言われ、私が「昨日使って汚くなったから捨てた」と答えると、孫娘の顔色が変わりました。

 「あのブラシ、じいじの誕生日に私があげたんよ。最低!」と冷ややかな目で一言。

 それに比べて、納戸の冷蔵庫のそばに引っ越したショートカットの「ゆきこ」は、温かい眼差しで迎えてくれました。

 夜中に冷蔵庫を開ける時だけは、今でも少しだけ心の準備が要ります